アイデアを生み出すための余裕

1つのアイデアは他のアイデアとの関係性の中で生まれるもので、何もない空間には存在しません。何時どのような場所でアイデアが生まれるかは分かりませんが、コントロール不能で予測不可能なものでもありません。

アイデアを生み出すプロセスは時に驚くほど簡単で、自然発生的に生まれることもありますし、とても苦しい作業になってしまうこともあります。しかし他の人とアイデアを交換し合うことでよい結果を得られることは多いでしょう。ワークショップなどの共有環境では、異なる分野のクリエイターが集まってアイデアを出し合うことで、信じられないほどの生産力が生み出されます。全く異なる視点を持つ人からの方が、より鋭い意見を引き出す事ができるものです。文化や思想の違いは摩擦を生み、その摩擦によって人々の想像力は昇華し、発想の大きな転換が起こります。

これらの効果を得るには、アイデアが生まれるワークッショップの場で実験と失敗が繰り返される余裕、また作業の途中でも作品への評価を繰り返し行える余裕が必要となります。残念なことに、ビジネス上ではさまざまなプレッシャーのせいでこのような余裕をもてないということが多くあります。冗談のような短い作業時間と少ない予算を突きつけられるケースが多すぎるのです。しかもその原因は、クライアント自身の意思決定の遅れによるものであったりします。

大規模なメーカーでは新製品の研究開発に何十億もの予算を投入することがあります。流通ネットワークへ供給する前に、実験とフィードバックを幾度となく繰り返し、最適な製造のプロセスを見つけ出します。でもマーケティングやプロモーション用のデザインなどについては直前まで手つかずにしてしまうことが多いようです。クリエイティブなアイデアが宅配ピザのように電話一つでオーダーできるとでも思っているのでしょうか。

クリエイティブな分野でよい仕事をするには時間と相応の努力が必要であり、ある程度の余裕を持たなくてはなりません。優秀な管理者/マネージャーはその余裕を作り出し、この重要性をあまり理解していない人々から、この部分を守るのが役目です。

ただし1つ注意しておきたいことがあります。それは、自由な環境によって創造力が飛躍的に上がる事はない、ということです。同じアルバムを5回リミックスしてもよいものが出来る保証はありません。締め切りや予算のプレッシャーが集中力を生み出し、意思決定を早めることだってあるのです。多くの場合そうであるようにやはりバランスが重要であり、それを提供できるのがよいマネージャーなのです。