交渉の仕方

よい交渉は、目的を共有するところから始まります。目的を共有することができれば、あとはそこへ近づくための最適な道筋を決めるだけ。交渉が行き詰まってしまった時は原点に戻り、お互いが当初の目的に向かって歩んでいるかどうかを確認することで、問題が解決することも少なくありません。そもそも交渉とは、バランスの取れた共通の着地点を見つける行為です。決して一方がもう一方をやり込めたりすることではないのです。柔軟な気持ちで、相手と対話する姿勢を持ちましょう。

実際の交渉で最も重要なのは、「報酬はいくらか」ということが多いですね。しかしクリエイティブな作品を提供するにあたって、その交渉の中味は単に数字を決めるばかりではありません。考慮しなければならない点を以下に挙げます。

交渉する項目は多岐にわたります。ある項目についてはある程度妥協し、その代わりに、他の項目で便宜を図ってもらうこともあるでしょう。報酬や経費などの金額の交渉で公平な数字を獲得するためには、ある程度は妥協してもよい項目を事前に考えておくのも大切なこと。そうすれば納得のいく交渉ができるでしょう。

作品の価値 は、他人がその作品にいくら支払うかによって決まりますが、自分が考える最低ラインより低い額の提示に同意する必要は全くありません。ミニマムな金額はどのように決めるのでしょうか。多くのヒントを与えてくれるのが、 キャッシュフローフォーキャスト です。もし、ある仕事がその完成に6週間を要するにもかかわらず、3週間の経費と同額の報酬しか提示されなかったとします。その時あなたには3つの選択肢があります。

  1. 仕事を断る 
  2. 仕事を受け、かつ別の仕事を探す(その時間があればの話) 
  3. 金銭的に困窮する 

大切なのは、経済的な犠牲を払ってでも受ける価値のある仕事、あるいはクライアントかどうか。

「交渉とは、当事者が共有する基盤を発見し、創造する芸術である」

これを意識して交渉を進めれば、よい合意点に到達することができるでしょう。まず制作にかかるすべての経費を算出すること。そしてその仕事に費やす時間を作るために他の作業を犠牲にしなければならない場合は、その時間を「リサーチ料」として上乗せする。自分の仕事がクライアントに与える価値を計算し、それも加える。自分が納得のいく額を要求する事は大切ですが、その額をきっちり正当化しようと努力しなくてもよいのです。作品を自分なりに評価したのなら、その金額は申し訳なさそうに告げるのではなく、これだけの価値があるのだと毅然と伝えましょう。

報酬の交渉に関しては、値切られることも予期していなくてはなりません。値段の交渉で最悪のケースは、こちらの出した額がすんなりと受け入れられる場合です。クライアントはあなたが思う以上に仕事を評価し、より高い額を支払う用意があったことを示しているからです。

もし合意点を見つけることが難しそうであれば、その場から立ち去ることも考えましょう。提示された評価額に同意できない旨を、経緯をもって説明します。交渉する時間が無駄になってしまいます。同じだけの時間を、より高い金額を払ってくれる他のクライアントを探したり、よりよいクライアントを惹きつけるための試作品を制作するのに使うこともできることを忘れないようにしましょう。

多くの書籍でセールスや交渉で大切なことが語られているが、ここで非常に貴重な助言をしよう。それは、仕事の内容が決まり、いよいよ自分の求める報酬額を言い放ったその直後… 黙る! そして向こうの答えを静かに待つ。すでに要求額は伝えているのだから、クライアントが考えをまとめている間、あなたは自分の提示額がいかに正当であるか、なぜその金額を払う価値があるか、また、いかに素晴らしい結果を自分が生み出すことができるかなど喋りまくってはいけない。あなたはただ静寂を守り穏やかに鎮座する。そしてクライアントに「いいですよ」と言わせる機会を与えるのだ。

最後に、多くの人が陥ってしまう悩みについて触れておきましょう。それは「買手の後悔」です。人は、何かを買うと、その直後に後悔してしまうことがあります。これには沈着さと自信をもって対抗しましょう。「ではお願いします!」というクライアントの言葉の後、やる気満々で合意の握手をし「やった〜、仕事とったぞぉ!」と叫び興奮しすぎないように。そのクライアントは命がけの覚悟であなたと契約し、自分が損害を受けるかもしれないことを密かに心配をしているかもしれません。落ち着いて心穏やかにもう一度ふり返り、家に戻ったら 交渉で決まったことを書き出し確認する という冷静な姿勢が大切なのです。